豊かな自然の中で育まれた原点と国際協力への道
私は鹿児島県大隅地方の豊かな自然に囲まれた、先祖代々暮らす土地で育ちました。三世代家族の中で過ごした幼少期は、自宅の畑で採れた野菜を使った味噌汁を食べたり、裏山を駆け回ったりと、自然と共に生活する日々でした。
しかし、転機は12歳の時。母をくも膜下出血で失い、その後3年間で一緒に暮らしていた家族である祖父母や父を次々に病で亡くしました。
高校進学の際には、地方の高校で塾など通わず、学校の授業と独学で国立大学薬学部に合格できる成績だった姉が大学進学を諦めて県庁に就職して家計を支えてくれました。また、授業料免除や新聞奨学生、奨学金など日本の教育支援制度にも助けられたことで大学、大学院へ進むことができました。
わたしは、家族や自分が病気や事故により突然社会的に弱い立場になることがあることを自らの経験で実感しました。そして、「支え合う社会の仕組み」の大切さを深く学び、その恩恵を受けたことへの感謝が私の生き方の根幹に刻まれました。
国際開発への関心を育んだ原点
中学生の頃、エチオピアを中心としたアフリカの飢餓、債務問題と構造調整プログラムによる公共サービスの破綻、中国の天安門事件、カンボジアでの選挙支援、ユーゴスラビア紛争、難民問題など国際社会が直面する課題についてニュースで報じられているのを目にしました。同時に、日本で支えられて教育を受けた自分と、同じ境遇でも異なる場所に生まれたために教育や生存の機会を失う子どもたちとの違いに疑問を抱きました。「世界はなぜ不公正なのか?」という問いが、やがて私を国際開発の道へと導きました。
大学卒業後、国際協力や国際開発の分野でキャリアを積み、アフリカをはじめとする様々な地域で現場経験を重ねました。その中で、人道支援、教育支援、コミュニティ開発など多岐にわたる課題に取り組み、多様な文化背景を持つ人々と共に解決策を模索しました。特に「人を助けようとすることで自らも助けられる」という学びは、私の活動を支える重要な原動力となっています。
家族を大切にしながら、持続可能な社会を目指して
学生時代、同じような家庭環境、境遇を経験した同世代に出会うことはなく、ただ同情はされたくない気持ちが強く、心の奥底にすべての悩みをしまい込み、どこか冷めた視点で周囲を眺めていました。しかし、日本を飛び出して世界中の多様な人々と出会う中で、少しずつ心が癒されていきました。特にアフリカの人々との出会いは、私にとって大きな転機でした。「人を助けようとする行動が、自分自身を助けることにつながる」「人を慰めることで、自分も癒される」ということを学びました。
その後、人生のパートナーと出会い、海外で仕事や研究を続ける中で、パートナーの両親を支える必要が出てきました。これまで国際開発支援をライフワークとして活動してきましたが、家族を早くに失った経験から、「目の前の家族を大切にすることがすべての原点である」と改めて考え、2009年に日本への帰国を決意しました。
現在、主に医療分野における人材育成や職員教育を通じてチームの能力を高めるとともに、財務管理や組織運営の改善にも積極的に取り組んでいます。持続可能な社会の実現を目指し、プロジェクトの企画・実施・評価の各段階で、地域に根ざした視点と国際的な知見を統合した解決案を提案しています。
これまで多くの方々に支えられて築いてきた経験をもとに、より良い未来を創るお手伝いをしたいと考えています。人と人とのつながりを大切にし、教育や医療を含むあらゆる分野での持続可能な発展を目指し、これからも微力ながら与えられた役割を果たしていきたいと思います。
代表:中山 嘉人(Yoshihito NAKAYAMA)
【 略 歴 】
大学卒業後、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊(JOCV)に参加(平成6年1次隊 ザンビア数学教師)。
帰国後、民間企業、国際NGO、JETROアジア経済研究所 開発スクール(国際開発専門家の養成機関)、JICAジュニア専門員(無償資金協力部/アフリカ・中近東・欧州部)を経て、2002年から2005年まで JICA技術協力専門家(教育行政アドバイザー)としてマラウイ共和国教育省計画局に勤務。
JICA客員研究員、医療法人の財務・人事担当理事、メファ・マネジメント取締役を経て、2010年より同社 代表。医療法人メファ仁愛会 理事(経営管理長)も兼任。
専門は、教育社会学。のちに、開発途上国における教育行政やプロジェクト運営の経験から、組織のインセンティブ作りとマネジメントの重要性に気づき、行動心理学や社会心理学、経営学に関心がシフトし、これらを学際的に学ぶ。
【 教 育 】
1994年:東京学芸大学教育学部アジア研究学科
1999年:アジア経済研究所開発スクール(国際開発学)9期生
2000年:英国ロンドン大学大学院 教育研究所 修士課程(教育と国際開発学)
2009年:インペリアル・カレッジ・ロンドン・ビジネススクール 修士課程(経営学:Distance Learning MBA)*同校のMBAテキストに掲載されているケーススタディ "CFS case-study on medical services"
2011年:英国バーミンガム大学大学院 博士課程 (教育行政)単位取得退学
参考:『国際開発とわたし - 失敗の連続から学んでいること』(英国開発勉強会:2008年3月)
【 所属学会・団体など 】
- 日本教育社会学会
- 日本アフリカ学会
- NPO法人 アフリカ日本協議会
【 主なトレーニング 】
- プロジェクト・サイクル・マネジメント(PCM)
- (計画・立案及びモニタリング・評価の各コース修了)
- ODA評価者のための評価ワークショップ
- JICA技術協力専門家養成研修
- Postgraduate Enterprise Summer School (The University of Birmingham)
- 日本医師会認定 医療安全推進者:医療安全推進者養成講座 修了
- 学会認定 医療安全活動指導員:医療安全心理・行動学会 医療安全活動指導員研修 修了
- 生成AI活用普及協会(GUGA) 生成AIパスポート試験 2024年 第3回 合格者
- 大型特殊免許(ホイールローダー、クレーン車、除雪車などの大型特殊自動車)
- 車両系建設機械(整地等用)技能講習修了
【 主な業務経験国 】
中国、インドネシア、タイ、スリランカ、グアテマラ、タンザニア、ケニア、セネガル、ザンビア、マラウイ、南アフリカ、レソトなど
【 学術論文と主なワーキング・ペーパー 】
- 「キャパシィティ・ディベロップメントから見た教育マネジメント支援」JICA客員研究員報告書 2007
- Training Needs Assessment Report on Education Sector in Malawi, Vol.1:
Administration, Vol.2: Secondary Teachers, Ministry of Education Malawi,
2005 - Working Paper on the Capacity Development for Education Sector in Malawi, JICA, 2005
- Malawi Education Policy Issues in Primary and Secondary Education, Ministry of Education Malawi / JICA, 2005
- Working Paper on the Pilot Programme for Establishment of SMASSE INSET Malawi
I~IV, Ministry of Education Malawi / JICA, 2002-2004 (Series) - Education Status Analysis Report, Malawi, Ministry of Education Malawi, 2002-2004
- Working Paper on the Capacity Development for Secondary Teachers in Science and Mathematics - The Case Study of Malawi -, Ministry of Education Malawi / JICA, 2002-2004 (Series)
- Distance Education and Higher Education in Africa. University of London, 2000
- Quantitative Expansion of Basic Education and its Factors - A Case Study of Zambia -JETROアジア経済研究所開発スクール, 1999
- 「バングラデッシュにおける国家開発計画と教育政策」(1994)